私は何度か、元夫の不倫帰りの迎えに行っていたことがあります。強制的に羽田空港や新横浜駅へ迎えに寄越していました。不倫の事実を否定しながらも、私にはばれているという状態だったのですが。ばれているのを知っていて、私を憎んでやっていたのならまだ許せるのですが、おそらくはタクシー代わりだっただけでしょう。
離婚を決意するまで
不倫帰りをお迎え
弁護士の先生に言われるまでもなく、当事者同士の話し合いがまず大切ですから、彼の不倫について面と向かって話を出した頃に記したものです。
あっけなく認めるかと思いきや不倫の事実を否定し、「仕事をとるためなら「愛してるよ」ぐらい言う!」と言っていたことを思い出しました。
こんなささやかな元夫の否定の言葉を、一生懸命信じ込もうとしていたのです。
私とは離婚するつもりが無いからこそ、否定するんだと。
でも実際には出張にかこつけて不倫を重ね、しかもその帰りの迎えに私を寄越していたのです。
眠れない。
眠りをあんなに愛していた私に、今は眠りが訪れてはくれない。
それは今の私が眠りを愛していないからだと思う。
闇にひとりで堕ちていくのは嫌だ。
目覚めてこれが現実のものと思い知らされるのが嫌だ。
彼はまっすぐな目を私に向け、力強く言った。
肉体関係は無いと。
仕事のため情報を得るためだったらその程度の台詞は言うと。
そんな嘘を私は今、嘘から真実にしなくてはならない。
それがどんなに過酷なことか、誰かに分かってもらえたら、少しは気持ちが楽になるだろうか。
結婚してもうすぐ四年目になる私たちには、夫婦生活というものが無かった。
それでもこれが私たちの夫婦のあり方なのだと、疑うことすらしなかった。
私は彼を心から信じていた。
結婚した最初の春。
彼の仕事が変わった。
その一ヵ月後、彼は胃潰瘍で倒れた。
私はこの事実をとても深く心に受け止めた。
彼の仕事はおそらくは、私程度の想像力では思いつかないほど、過酷なことがあるのであろう。
だから、彼に無理強いをすることはできなかったし、この事実をひとり心の中に閉じ込めていた。
彼の健康が心配だった。
健康上の理由だったらどうしようと、彼が健康を害していたらどうしようと、そればかりが気がかりだった。
病院に行った折、さりげなく医師に相談したこともあったが、いずれにせよ本人を受診させなければならない。
そんなことを彼に言うことは私にはできなかった。
こんなデリケートな問題に対処できる自信が無かった。
それでも不安はつのり、もしも彼が何らかの障害をもってしまっていて、それが手遅れになったら…
やはりそれは妻である私にしか対処できないことなんだと、自分に言い聞かせて、機会を伺う日々だった。
馬鹿だと言う人がいるかと思う。
私は、彼が他の女と寝ていることを知って、怒るより悲しむより、安心してしまったのだ。
この件に関しては。彼は健康だったのだ。
情けない話だと思う。
全てを冗談にして、自分を誤魔化しつつ、彼の健康を心配していたこの期間、何のことは無い、彼は彼女に操を立てていただけのことだったのだ。
不倫は絶対に許せないと、それは今でも思う。
私には一生できないことだろうと思う。
結婚前、もしも不倫をされたら…と考えると吐き気がした。
今は実際に吐いている。
なのに私はそれを飲み込んで生きていかなくてはならない。
少なくとも彼と別れるその日までは。
彼女がどんな人間であるかは私には関係ない。
高貴な生まれの女性であろうが、生まれながらの娼婦であろうが。
今の私にとって事実はたったひとつだ。
私は彼に不倫をさせてしまう程度の女だったということ。
相手の女性を責めるつもりは無い。彼を責めるつもりも無い。
すべての原因は私の内にあって、それが災いを起こしたのだから…
今はただ、そう自分に思い込ませるのに精一杯だ。
不倫をする人の心理がわからない。
好きになってしまった人がたまたま結婚していただけというのだろうか。
結婚してしまった後で運命の人に出会ったしまったというのだろうか。
私は、夫婦二人して築いてきた歴史を大切にしたい。
些細なことの積み重ねに過ぎなくても、二人にとっては意味のある歴史だ。
二人にしか意味をなさない歴史だ。
それを踏みにじることは私にはできない。
もしも私の運命の人が彼でなかったとして、これから先の人生で運命の人に出会ってしまったとしても、私は彼との歴史をとるだろう。
一緒に食事をし一緒に眠りに入り、笑って泣いて喧嘩もして、そのひとつひとつは、他人にはただの出来事に過ぎなくても、二人にだけはきっとダイアモンドの輝きがあるはずだ。
少なくとも私はそう思っていた、信じていた。
私は何もせずに穢されたということだ。
彼は他の女と寝たことで、間接的に私を穢した。
彼は私と別れて、彼女との人生を歩みたいと考えているのだろうか?
それならそれでいいような気もする。
留めておく関係ほど寂しいものは無い。
私はまた苦しく辛い夜を繰り返すことになる。
でもそれは、私の業なのだから甘んじて受けようと思う。
ただ、両親のことだけは…
考えると身を切られるように辛い。
親不孝ばかり重ねる私を、両親は許してくれるだろうか?
九州へ出張している彼。
行き先は確かに九州だった。
けれど私は知っている、彼が九州から大阪へ移動していることを。
私はその彼を迎えに行く。
迎えに行くのは辛い。
何故私が迎えにいかなくてはならないのか。
それでも行かなければ、この関係が終わってしまうと、終わらせるまいとの一心で、私は彼を迎えに行く。
ゲートの前で彼を待つ。
時間になれば彼は現れるのに、迎えに来たのだから会えればいいだけなのに、私は必死で彼の姿を探していた。
彼がゲートに現れる最初の瞬間を見逃すまいと。
一瞬も彼を見逃したくなくて、目が痛くなるほど彼の姿をその人ごみの中に探した。
こんな大切なことを忘れてしまっていたなんて…
胸が痛くなる。
動悸はますます激しくなり、何かとても大きなものが私の中に溢れてくる。
どんな結末になってもいい。
今はただ、彼に会いたく彼の声が聞きたかった。
不倫をしてきたのだから、私の顔なんて見たくないだろうに。
愛人の余韻に浸りつつ、独りで帰ればいいだろうに。
何故私を迎えに寄越す?
私は知っている、彼は「独りでいられない」だけなんだと。
この時間が私には果てしなく続くこれからの闇のように思えた。
よもや…彼はすでに離婚という結論を出していて、それを私に告げようと思っているのだろうか。
そんな考えが頭を過ぎる。
ちょっと待って欲しい、今はまだ言わないで欲しい。
まだ何の努力もしてないのに!と心の中で叫ぶ。
お願いだから今少しだけ、私に努力をする時間を下さい。
神に世界に、この世に存在するすべてのものに、全身全霊をかけて祈る。
彼はまっすぐ前を見据えて、何かもっとずっと遠くにあるものを見ているような目で運転をしていた。
私は彼とどうしたいのだろう。
あの裏切りの瞬間の衝撃を私は忘れることは無いだろうと思う。
でもこんなにも心は彼を欲している。
戻ってきて欲しいと切望している。
もう、戻ることは無いかも知れないのに、その可能性の方が高いと自分で思っているその一方で、気がつくと彼が戻ってくることを祈っている自分がいる。
彼女のことは知らない。
私にとっては赤の他人だ。
彼女がどんな思いをしようが、どんな人生を歩むことになろうが、そこまで私は抱えることはできない。
ただ可哀想な人だとは思う。
おそらくは彼女の願いは、彼との結婚か、結婚できないまでも、少しでも彼と過ごす時間を長くしたいことだろう。
でもその願いは、少なくとも現時点では適っていない。
願いが適わない辛さは皆一緒だ。
私も今願っていることが適わなかったら、どんなに辛い日々を送ることだろうか。
人の幸せは他人の不幸の上に成り立っているというのは本当なのだろうか。
皆が幸せになれればいいのに…こんな迷路に入り込まずに…
辛い、寂しい、悲しい…
そんな言葉は今の私には当てはまらない。
眠れないこと、食べれないこと、それが全てだ。
息が苦しい、ここはそんなに空気が薄いのかと思うほどだ。
反対ばかりしたけれど、私は今のこの家が好きだ。
居心地のいい部屋だと思ってたし、今でもそう思う。
それがこんなに息苦しい。
空気が悪いはずは無い。
なのに息が上手に吸えない。
何故なんだろう。
息ってどうやって吸うんだっけ?
お腹の中に黒いねっとりとした何かが私に巣くっていることを感じる。
この何かは一体何なのだろう。
馬鹿な彼女、馬鹿な彼、そして一番馬鹿な私。
この迷路から抜け出したい。
多分この迷路は地下なんだろう。
だからこんなに息が苦しく暗いんだろうと思う。
眠りたいけれど眠れない。
彼がいない部屋は、主人が不在の家は、切なくて寂しくて、置いてあるカップひとつとっても、主人の不在を嘆いているように見えてしまう。
時刻は2:30を回った。
明日も研修だ。
うつろに響く講師の声、機械的にメモをとりながら、頭の半分では隣に座っている同僚に、この心臓の動きを悟られたくないと思っている。
どうか、神様。
誰もがこの事態に気がつきませんように。
どうか神様、最悪の場合でも、私の両親には私の業を負わせないでください。
神様どうか、もう一度だけ、私が私でいられる場所へ、私を戻してください。
羽田空港に迎えに行くことが書かれていますが、これは今でもよく覚えています。
命がけの運転でしたので。
ひどい雨が振っていてただでさえ視界が悪いのに、手は震えてハンドリングは怪しいし、足まで震えてるものだから、ブレーキは良く踏めないしで、自分で運転しててこう言うのは変ですが、生きた心地がしなかったことを覚えています。
文章に流れが無くなっていますよね。
別れてもいいと書いた直後に、別れたくないとすぐに書いています。
気持ちが激しく揺らいでいたんですね、私。
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